少子化問題の原因と対策-少子化社会の現状と課題

日本の少子化は結婚に対する意識、出産に対する意識、若い世代などの所得の伸び悩み、就労形態などによる家族形成状況の違い、依然として厳しい女性の就労継続、子育て世代の男性の長時間労働なとが原因とされています。

しかし、子供が出来ても子育ての不安をあおる待機児童の問題など、対策の不十分な点も見受けられます。

また子供の貧困問題が発覚したことで、国が新たな対策を導入するなど、少子化社会には子供が育たない環境があることも知られています。

将来の日本を担う子供たちに起きている社会問題…少子化とは何か?少子化問題には、どのような解決策が必要なのかを考えながらお読みください。

では、少子化の現状からわかる原因と課題、対策などを紹介していきます。

少子化について

はじめに少子化の説明から読んでください。

少子化とは
親世代よりも子世代が少なくなること。合計特殊出生率が人口置換水準を下回る状態が続き,子供の数が減少すること。総人口に占める子供の人口の割合が低下すること。 → 人口置換水準

少子化問題は、内閣府特命担当大臣(少子化大臣)により、対策がおこなわれています。

少子化の現状と課題

日本の少子化の現状と課題について、内閣府より次の報告があります。

1.出生数、出生率の推移(出生数と合計特殊出生率の推移)我が国の年間の出生数は、第1次ベビーブーム期には約270万人、第2次ベビーブーム期には約200万人であったが、1984(昭和59)年には150万人を割り込み、1991(平成3)年以降は増加と減少を繰り返しながら、緩やかな減少傾向となっている。

2.総人口の減少と人口構造の変化(50年後の我が国の人口)
我が国の総人口は、2010年の1億2,806万人から長期の人口減少過程に入り、2030年の1億1,662万人を経て、2048(平成60)年には1億人を割って9,913万人となり、50年後の2060年には8,674万人になることが見込まれている。注)

総人口の減少と人口構造の変化

注)少子高齢化による日本の人口の推移

少子高齢化による日本の人口の推移

3.婚姻・出産等の状況注)
未婚化・非婚化の進行、晩婚化、晩産化の進行

4.結婚、出産、子育てをめぐる状況注)
結婚に対する意識、出産に対する意識、若い世代などの所得の伸び悩み、就労形態などによる家族形成状況の違い、依然として厳しい女性の就労継続、子育て世代の男性の長時間労働

5.諸外国との国際比較注)
諸外国における出生率の状況、家族関係社会支出の国際比較

注)抜粋していませんので出典より確認してください

少子化の現状は深刻なものとなっています。大きな課題を抱えていることがわかりますが、少子化の影響とは、どのようなものなのでしょうか。

少子化の影響

平成9年の報告では、少子化の影響について、次のように述べられていました。

(1)少子化の影響
(1)経済面の影響
(労働力人口の減少と経済成長への影響)
・ とりわけ生産年齢人口の減少をもたらし、労働力人口の減少につながる。
・ 労働力人口の年齢構成も大きく変化し、高齢者の場合には、個人差はあるものの、短時間勤務を希望する割合が高いことを勘案すれば、実労働時間数を考慮した場合における労働力供給の一層の減少をもたらすことが懸念される。
・ 労働力の制約は、一般に貯蓄を取り崩すと考えられる退職者の割合の増加に伴う貯蓄率の低下と相まって投資を抑制し、労働生産性の上昇を抑制する要因になる。
労働力供給の減少と労働生産性の伸び悩みが現実のものとなれば、今後、経済成長率は傾向的に低下する可能性がある。

(国民の生活水準への影響)
労働力供給の減少と労働生産性の伸び悩みによる経済成長の鈍化と、高齢化の進展に伴い避けることができないと見込まれる社会保障費の負担の増大は、国民の生活水準に大きな影響を及ぼす。
・ 少子・高齢社会の結果、社会保障分野において現役世代の負担が増大し、世代間の所得移転を拡大させる大きな要因となる。
・ 諸般の構造改革に取り組まず、現状のまま推移した場合には、人口1人当たり所得の伸びの低下と国民負担率の上昇によって、現役世代の税・社会保険料を差し引いた手取り所得は減少に転じるという厳しい予測もある。
現役世代にとって働くことが生活水準の向上に結びつかないような社会では、生活・消費の両面で、経済・社会の活力が阻害される危険性が大きいという深刻な状況になる。

(2)社会面の影響
(家族の変容)
・ 単身者や子どものいない世帯が増加し、少子化が進行する中で、社会の基礎的単位である家族の形態も大きく変化するとともに多様化する。
単身高齢者の増加は、介護その他の社会的扶養の必要性を高める。

(子どもへの影響)
・ 子ども数の減少による子ども同士、特に異年齢の子ども同士の交流の機会の減少、過保護化などにより、子どもの社会性がはぐくまれにくくなるなど、子ども自身の健やかな成長への影響が懸念される。

(地域社会の変容)
・ 少子化の進行による人口の自然減により、人口の減少が全国的に進行すると見込まれる。その結果、広い地域で過疎化・高齢化が進行すると予想される。
このため、現行の地方行政の体制のままでは、市町村によっては住民に対する基礎的なサービスの提供が困難になると懸念される。
また、今後、大都市部においても急速な高齢化が見込まれることから、それに伴う諸問題が顕在化することが予想される。

<概ねマイナス面の影響>
少子化の影響としては、家族の変容などに関しては意見が分かれるものの、上記のような概ねマイナス面の影響と考える指摘が多い。
ただし、例えば、生活面では、環境負荷の低減、大都市部等での住宅・土地問題や交通混雑等過密に伴う諸問題の改善などゆとりある生活環境の形成、一人当たりの社会資本の量の増加、教育面では、密度の濃い教育の実現や受験戦争の緩和などプラス面の影響を指摘する意見があることに留意する必要がある。
こうした指摘に対しては、あくまで短期的な影響であって、経済成長の低下が生活水準の低下をもたらす以上やはり生活にゆとりはなくなるとする意見、人口減少に伴い教育サービスの供給も制約され密度の濃い教育にはつながらないとする意見がある。
いずれにしろ、少子化が社会全体の様々な局面において計り知れない大きな影響を与えることは間違いない。

少子化の影響はメリットとデメリットがありましたが、結果としてデメリットが大きくなっています。

予測では、広い地域で過疎化・高齢化が進行するなど、現在、顕著化していることがあげられています。現在の日本は、この予測が現実のものとなった社会といえます。

少子化の原因

少子化の原因については次のように述べられています。最初に紹介した、少子化の現状と課題を思い出しながら読んでください。

(1) 少子化の原因と背景
近年の出生率低下の主な要因としては、晩婚化の進行等による未婚率の上昇がある。その背景には、結婚に関する意識の変化と併せて、固定的な性別役割分業を前提とした職場優先の企業風土、核家族化や都市化の進行等により、仕事と子育ての両立の負担感が増大していることや、子育てそのものの負担感が増大していることがあるものと考えられる。なお、昭和50年代前半以降、夫婦の平均出生児数は平均理想子どもの数よりも少なく、ほぼ一定の開きがあるまま推移してきているが、こうした仕事と子育ての両立の負担感が、その要因の一つとなっているものと考えられる。

Ⅳ 少子化の要因とその背景
1.少子化の要因
(1)未婚率の上昇(晩婚化の進行と生涯未婚率の上昇)
○ 未婚率上昇の要因
1.育児に対する負担感、仕事との両立に対する負担感
・家庭よりも仕事を優先させることを求める固定的な雇用慣行と企業風土。
・根強い固定的な男女の役割分業意識、男性の家事・育児参画が進まない実態。など
2.個人の結婚観、価値観の変化
3.親から自立して結婚生活を営むことへのためらい
(2)夫婦の平均出生児数(2.2人)と平均理想子ども数(2.6人)との開き
○ 夫婦の平均出生児数と平均理想子ども数との開きの要因
1.上記(1)1.のほか、
2.子育てに関する直接的費用と機会費用の増加
3.子どものよりよい生活への願望
2.少子化の要因の背景
(1)社会の成熟化に伴う個人の多様な生き方の表れ
(2)女性の社会進出とそれを阻む固定的な男女の役割分業意識と雇用慣行、それを支える企業風土の存在
(3)快適な生活の下での自立に対するためらい
(4)現在、そして将来の社会に対する不安感

少子化の原因は未婚率の上昇、子育てに関する直接的費用と機会費用の増加、子どものよりよい生活への願望となっています。最初に読んだ、少子化の現状と課題で述べられていたことと同じでした。

次は、少子化対策について紹介します。

少子化対策

日本では少子化対策推進基本方針により、下記の少子化対策がおこなわれてまいす。

(2) 少子化対策の趣旨及び基本的視点
少子化対策は、こうした少子化の原因と背景に対応して、仕事と子育ての両立に係る負担感や子育ての負担感を緩和・除去し、安心して子育てができるような様々な環境整備を進めることにより、21世紀の我が国を家庭や子育てに夢や希望を持つことができる社会にしようとするものである。
少子化対策の推進に当たっては、次のような基本的視点に立つことが適当である。
(1) 結婚や出産は、当事者の自由な選択に委ねられるべきものであること。
(2) 男女共同参画社会の形成や、次代を担う子どもが心身ともに健やかに育つことができる社会づくりを旨とすること。
(3) 社会全体の取組みとして、国民的な理解と広がりをもって子育て家庭を支援すること。

【少子化対策】

厚生労働省
子ども・子育て支援
職場における子育て支援

内閣府
少子化対策 / 子ども・子育て支援新制度

このほかにも全国各地で少子化対策フォーラムがひらかれており、今後の少子化対策の実施に向けての取り組みもおこなわれています。

国だけでなく、地方での対策もとられていることから、少子化には地域の特性に合わせる臨機応変な対策も必要不可欠なことがわかります。

企業による育児支援

企業も少子化対策として育児支援を模索中とのこと。以下の動画をご覧ください。

子供の貧困と対策

これまでみてきたように、少子化対策で国と企業も努力しているのですが、少子化社会の新たな闇が浮き彫りにされています。

子供の貧困です。詳しくは下記を読んでください。

▶ おなかいっぱい食べたい ~緊急調査・子どもの貧困~

この子供の貧困問題が明るみになったことで、国も新たな対策をおこなっています。

▶ 子供の貧困対策の推進

このように子どもの貧困対策の推進に関する法律や政令などが整備され、現在は子供の貧困問題にも国が解決に向けて取り組んでいます。

以上のような対策が行われていますが、論文等もあるので参考にしてください。

少子化に関する論文等

少子化に関する小論文やレポートなどなどは下記より閲覧できます。

▶ 少子化論文
▶ 少子化資料
▶ 少子化図書1 ▶ 少子化図書2
▶ その他レポート等

まとめ

少子化とは親世代よりも子世代が少なくなることでした。少子化は、社会全体の様々な局面において、計り知れない大きな影響を与えると考えられていました。

日本は、今後も少子化が進んでいくことが予想されていましたが、現在の日本は過去の予測を反映した社会となっていました。

みなさんのお住まいの地域でも、すでに予測されていた少子化の影響があらわれているのではないでしょうか。

少子化の原因は、未婚率の上昇、子育てに関する直接的費用と機会費用の増加、子どものよりよい生活への願望があるためでした。

背景には社会の成熟化に伴う個人の多様な生き方の表れ、女性の社会進出とそれを阻む固定的な男女の役割分業意識と雇用慣行、それを支える企業風土の存在、快適な生活の下での自立に対するためらいなどがありました。

そして、現在および将来の社会に対する不安感がありました。

少子化対策推進基本方針によって、仕事と子育ての両立、安心して子育てができるような様々な環境整備を進め子供の成長と子育て家庭を支援する社会を目指す少子化対策がおこなわれていました。

社会の成熟によって、少子化が起きていましたが、社会問題はさまざまな要因が重なり合って深刻化していきます。少子化問題と高齢化問題が重なり合うと少子高齢化問題になります。

下記より高齢化問題の現状も確認してください。

▶ 高齢化問題の原因と対策-高齢化社会の現状と課題